まずは人を知れ -安倍晴明編-

言わずと知れた『王都妖奇譚』の主人公。希代の大陰陽師。
(CD版キャスト:井上和彦・結城比呂・朝見順子 / TV版キャスト:三上博史)

【プリンセスGOLD'95 8/16号付録卓上ポストカードカレンダー】

尺貫法を知らない方のために付け加えると、1尺は「かね尺」で約30.3cm、「くじら尺」で約37.9cm。
この場合「かね尺」だと考えて六尺は約181.8cm。この時代の成人男子平均身長は160cm弱であるからして…ものすごい巨漢(おおおとこ)!さて「およそ六尺」というのは「六尺強」か「六尺弱」か…。
一貫はおよそ3.75kg。十九貫は約71.25kg。さて「だいたい十九貫」というのは「十九貫強」か「十九貫弱」か…。
ただし、当時の尺貫が現在と同じだという保証はない。

趣味の「星占いv」であるが、あの黄道十二宮(十三宮になったとか聞くけど)からなる西洋占星術を連想した人は直ちに申し出なさい。まして相性占いをすぐさま思い出した者は後で職員室に来るように。…「天文道」だってば。
考えてもみれば安倍晴明公は天文得業生を経て天文博士になっているわけで、『大鏡』花山院出家のくだりなんかは当時の「星占い」がいかなる物だったかがよく解る所だと思う…のだが、あのハートマークの意味は何?

他に『王都』の晴明の設定というと、

などなど。

陰陽師は位にして従七位上が相当。
位色は本来の令制では

であるが、大同元(806)年より七位が六位と同様、初位が八位と同様に。
その後も変遷があったため、『王都』の頃は一位〜四位が黒(正式には滅紫(けしむらさき)という)、五位が緋、六位以下が縹である。

史実上の安倍晴明は実に謎が多く、出身地さえ定かでない。後世の陰陽師達が彼の名声を利用したのも原因の一つであろう。

安倍氏系図 【『尊卑分脈』他】
右大臣御主人広庭─嶋丸┬粳虫
└古美奈
─道守─兄雄─春材─益材
┌───────────────────────────┘
晴明┬吉平
└吉昌
┬時親
├円弼
├章親
├奉親
└平*
─有行
─兼吉


─政義
─泰長
─…

┌貞義
┴日覚
┬政文
├泰有
├泰親
└泰時
┬泰政
└泰行
─…

奈良県の安倍文殊院は安倍氏の氏寺なのだそうで安倍仲麻呂像が祀られている。その子孫ということで晴明像も安置されているのだが、晴明公が仲麻呂の子孫であるという歴史的な確証はないので御注意。
「天文司郎安倍博士吉備後胤晴明朝臣撰」ということになっている『三国相伝陰陽*轄**内伝金烏玉兎集』、実際は鎌倉時代成立らしい。でも『占事略決』という占術書は晴明公の著作である事が確実視されているってさ。村上修一『日本陰陽道史総説』(1981年塙書房)139〜169ページに全文あり。
芸能・伝承の世界における『金烏玉兎集』は「安倍仲麻呂の時代に始まる秘術書」という設定になっている事が多い、いわば東洋版『ソロモンの鍵』。「これを読めば世の中の事が全部解るんだよ」なんて科白が『蘆屋道満大内鑑』にあったな。そんな御大層な物をぞんざいに扱うな、晴明!!
【プリンセスGOLD'96 08/13号表紙(文庫版第2巻扉絵)】


目次 | 次項