春と聞かねば知らでありしを

氷とけ去り葦はつのぐむ さては時ぞと思うあやにく、今日も昨日も雪の空、今日も昨日も雪の空。【早春譜】

リカちゃんには気をつけろ。晴明サマはリカちゃんを奥さんにするつもりだぞ。

…誰もお人形だとは言っとらん。中世以後のサブカルチャーにおける安倍晴明の奥方様の名前が「梨花」【仮名草子『安倍晴明物語』】、または「利花」【三国相伝陰陽*轄**内伝金烏玉兎集】というのだよ。
番外編「花鎮」に出て来られただけで『王都』においてはその存在さえなくなってしまっているが、奥方様について少しばかりふれておこう。
最も有名なエピソードについては岩崎先生も「花鎮」で描いていらっしゃるので割愛させてもらいます。

なんかこう…古典読んでも評判良くないんだよね、奥方様…。『安倍晴明物語』で伯道上人という人物が晴明に向かって「梨花の容貌の良いのに溺れたからこうなるのだ」と叱る場面があるので外見は良いようだが。
例えば、晴明が幼い時に龍神から頂いた宝玉をうっかり割ってしまっただの、晴明が唐に渡っている間に晴明の弟子の道満と不義の仲になってしまっていただの…とほほ。
ちなみに道満は晴明と術比べで負けて弟子になったと設定されている。
その辺のくだりは『三国相伝〜』『安倍晴明物語』『月刈藻集』などに著されているが、てっとり早い所でその拾「陽のあたる場所」の術比べの場面を思い出されたし。

いやしかし、『王都』においてはあの晴明サマをさしおいて不倫などできようか、いや、ない(反語)。
ここは彼女のほのぼのした面だけをとって「鬼嫌いで少しうっかりさんな所がある可愛い美人さん」とでも評しておこう…………うん。実際「花鎮」の奥方様がそうなんだし…て事は奥方様には鬼が見えるワケね…。

史実からの視点では、安倍晴明公の長男・吉平は天暦10(954)年〜万寿3(1026)年。
だから何だというと、吉平が生まれた時、晴明公は34歳なので仮に「晴明サマ」が26歳だとすると後7年は独身を通せる、と。

「春よ、来い」は将之。頑張れよー、推定年令25歳以上(苦笑)。
個人的に彼のファンである私は、ひそかに(?)将之&千早をプッシュしていたのである。
……解っちゃいるんですよ。「夢に異性が現れるのは相手が自分を想っているから」ていう俗信が当時はあったし。でもかわいいカップルじゃないですか♪
なぁに、前世の「恋人」が(多分)美人だったんだ【五巻「余談こぼればなし」】、今世でもきっといい人みつかるよ、将之♪………きっとね。

春と聞かねば知らでありしを 聞けば急かるる胸の思いをいかにせよとの此頃か、いかにせよとの此頃か。


前項 | 目次 | 次項