邪推は続くよどこまでも

ストーカー(stalker)。自分が目を付けた相手を歪んだ愛情からつけ回し、プライバシーに侵入し、最悪の場合殺人さえ犯す変質行為者の事である。
我が悪友・天野がイベント会場で力説していたのが発端だったような気もするが、私の近辺で「影連はストーカーの素質あり…というよりストーカーそのものだ」という説が浮上した。話を聞くと笑えないぞ。

(しつこいけど天野の説だからね)もとはといえば晴明が影連を手酷くフったのが悪かったのだ。
晴明の愛が自分に向けられていないと思い込んだ影連は「都を滅ぼすためにはまず晴明を殺さねばならない」という大義名分の下に晴明の追っかけを始める。

その貳「琥珀の迷境」の初登場シーンにして羅候に長々と晴明の事を喋り自分がどれほど彼について知っているかをバラしてしまった上に自分の目ともいえるその羅候を晴明の所へ遣る始末(CD第1弾では「私の愛しい弟弟子」発言!!)。
天野によると、晴明の手を振り払い崖下へ転落という彼の(人としての)最期も『目前で死ぬ事で自分を忘れられなくする』ストーカーの特徴に該当するらしい(筆者は不支持)。

※『ぱふ』での岩崎先生のインタビューをご覧になった方はご存じですが、実際は「作画のなりゆき(崖が高すぎた)で死んだ」らしいです。

で、その伍「鬼神楽」。
晴明に会いたい一心で冥府から舞い戻った影連は将之という晴明の親友に出くわし、表向きは静かでも内心は嫉妬の嵐。
「私以外の輩に心を許すとは!!」とばかりに将之に晴明を攻撃させるという陰湿さ。

しかしストーカーの恐ろしい所は、相手が自分を拒絶するのをその周囲の人間のせいと思い込んで殺しにかかる事だ。
これはあくまで最悪のケースなのだが、自己暗示に陥ってしまっている影連はまんまとそのパターンにハマッてしまう。
「藤原一門への復讐」は建前で、実際は「邪魔者を消し、晴明の意識を(憎しみという形で)全て自分に向けさせるため」。だってその弐拾四「狂風」で「十分憎むに足る理由を与えてやった」と自白しているもん。
…そんな不純な動機で殺されては将之も成仏できるワケないや。

そしてストーカー影連の真骨頂、プライバシー侵入である。
その拾壱「妖星」で晴明邸に気配なく現れていたというのはまだいい。晴明がどこにいようと必ずつきとめて現れ、いたぶるだけいたぶって苦しめる。
その弐拾四「狂風」では晴明が滝打ちに行っていた事を知っており、ついには彼の体を乗っ取るという究極のプライバシー侵入を果たした!
が、まだ飽き足らなかったのかその弐拾七「妖光の帳(前編)」では晴明邸に突然現れ、事もあろうに、アレ。
単行本ではまだしもGOLD本誌では接吻にしか見えなかったんだ。

かくして影連は10世紀も早くストーカーの先駈けを果たしたのである。
彼の報われぬ歪んだ愛は『晴明に消してもらう』事を望みとさせ、実に5(6?)年もの間ハタ迷惑の限りを尽くさせた。

その参拾、参拾壱「蜃楼都市まぼろしのみやこ<参><四>」にて「殺してやる」と言いながら「動けるなら逃げろ」と矛盾した発言をした理由は晴明の戦闘意識を煽る必要があっただけで実際に晴明の死を望んでいたわけではなかったからだろう。
現に「お前の骸と共に」と放った呪は実は手を放させるための物にすぎなかった。
その後の「共に来るか?」。晴明に愛されていないと思い込んでいるのだから最初から期待していなかったはずだ。
じゃあ何故誘った!?「まさか来るとは思わなかったから」というのは答えになってないよ。
あれは「私はあなたと一緒にいたいのです、来てはくれないと解っていても」というラブコールだったのではなかろうかと…。

そして影連の一途な愛は意外な顛末を迎える。
自分を愛していないハズの晴明が、自分を救うために生還できぬであろう冥穴に飛び込んで来たのだ。
だが同情では辛すぎる、晴明には生きていてほしい。手を放そうとする影連は気付かされた。晴明も、自分を…。
そうして2人は大多数のファンの煩悩そのままに愛のテーマをBGMに流し出す。
けれど最期に通じる想いほど報われないものはない。
だから影連は言ったのだ。愛しい思いを込めて「おまえがきらいなんだ…」と…。

…冗談になってねェ。(T_T)


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