まずは人を知れ-賀茂忠行編-

お気楽極楽(おおっ懐かしい)な陰陽頭。彼も昔は若かった。
(CD版キャスト:永井一郎 / TV版キャスト:筒井康隆)

悲しい事に呪力は晴明に劣っている【その参「呪縛の杜」】。が、陰陽師としての洞察力・思考力はまだまだ現役。その弐拾「幾億の月光」で判る通り晴明の上を行く。
しかし陰陽寮内での評判は「忠行どのがいたからどうなるってもんでもない」だの「昔は切れ者だったらしいが…」だの、お〜〜〜い。

“変若”(おち)の呪法で見せてくれた30年前の姿で一気に女性ファンが増えたらしい(『王都』の読者自体、女性が殆どか)。
あの姿から察するに今の年令は大体50代半ばと推測されるが、10年前と大して外見が変わっていないのは大いなる謎。
ちなみに、“変若”の呪法を行うために祈った泰山府君とは中国五山の1つである東岳(泰山)に降りた神で、陰陽道の主神とも言える。生ける者の生死を司る神である。泰山に降りた神であるために泰山を神格化した「東岳大帝」と同一視され、又、北極星の神格化である太一神とも同一視されている。

拾遺「化石の海」その弐にて平将門を調伏すべく呪法を行っているが、史実の上でも承平・天慶の乱の際に大白衣観音法を行うよう藤原師輔に進言した。
大白衣観音法とは、5本(当時は多分5「杯」)の蝋燭を供え「九曜息災大白衣観音陀羅尼」を誦するというもの。
天変兵革はじめ一切の災難、自然に消散するの効ありとする。詳しくは村山修一『日本陰陽道史総説』(1981年塙書房)237ページを参照のこと。

賀茂氏の祖先は役行者(役小角)であるという伝承がある。役行者も呪師として伝説が数多い人物である。

賀茂氏略系図 【『尊卑分脈』他】
※光輔、光国、保憲女の名は『尊卑』にない
┌光栄─守道
吉備麿─小黒麿┬比売
├諸雄
├田守
└萱草

┬人麿
└諸魚

─江人

忠行

保憲
├保胤
├保章
└保遠
├光輔
┼光国
└女子
─為政




┌───────────────────────────┘
├道平
└陳經
┬成平

└道言
┬宗憲
└周平
┬光平
└守憲
─在憲
─憲平
─…
─…

保憲を除く彼の息子たちは後に人の養子となったらしく、慶滋(よししげ)と改姓する。
また、保憲の弟である慶滋保胤(よししげのやすたね)は出家し寂心と名乗るようになる。
『日本往生極楽記』 などの著作がある保胤の出家の様は『今昔物語集』巻19-3「内記慶滋保胤出家語」に描かれており、説話集に彼が登場する話もいくつか存在する。近代では芥川龍之介『六の宮の姫君』にも登場。


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